歓迎されぬ老人ホーム−−町田 /東京

◇介護保険の負担増
◇権限ないのに建築拒否−−町田市、誤り認め対応改める

民間事業者が建設を計画する有料の老人ホームについて、
町田市は昨年末まで権限がないのに建物の建築手続きなどを拒んでいたことが分かった。
65歳以上の高齢者が大量に移り住むと介護保険の負担が増えるためで、
市は誤りを認めて対応を改めた。
だが別の自治体の担当者は「老人ホームが増えて欲しくないのは町田市だけではない」と漏らす。
なぜ「終(つい)の住み家」は歓迎されないのだろう?

町田市によると、昨年1月以降、企業やNPO(特定非営利活動法人)などから
老人ホーム建設の申請や打診が急増。
市は10件前後の建設計画について「ご遠慮願いたい」と断念するよう「理解」を求めた。
老人ホームの設置には都道府県への届け出と市町村による建物の建築確認が必要で、
適正な建物であれば市町村に建築確認を拒む権限はない。
市の主張には法的根拠がなく、この実態が昨年末に報道されたことを受け、市は方針転換。
現在はNPOらと話し合いを始めている。

ところが、この「指導」の違法性を市の介護保険の担当者は認識していたという。
「職権乱用と言われかねないと思っていた」。なぜ、そうまでして断ったのか。

老人ホームで介護サービスが使われると、費用の9割は入居者が住民登録している市町村が負担する。
住民票を移す入所者が増えれば市町村の負担も増え、市民から徴収する介護保険料にはね返る。
町田の場合は、1人増えると、65歳以上の同市民の介護保険料(月額3300円)は
約0・6円アップする計算になるという。
加えて、町田に二つあるホームのうち、入所できた市民はわずか7%。
入所一時金も数千万円と高額で、市は「今後も市民の入所が増えるとは考えにくい」とみる。
一方で、市には今後、特別養護老人ホームを作る計画もある。
何より、介護保険料は40歳以上の市民全員が払い、住民税非課税の低所得層からも徴収する仕組み。
「市民があまり入所しないホームのために市税の支出を増やすべきなのか」
との判断が働いた側面は否定できないという。

住環境の良さなどから都内の1割弱の特養などが集まる青梅市の介護保険の担当者は
「老人ホームは土地取得から建物建設まで設置者が負担するため、地価が安いところに集まりがち。
そこへ要介護度の重い人ばかりが入所すれば、ホームの多い自治体ばかり出費が増える」と指摘する。
「町田の行為は違法。でも気持ちは分からなくもない」
「介護保険法が施行されてまもなく2年になるが、現実に制度が応じきれていない」と
同情する別の自治体の介護保険担当者もいる。

介護保険法には、特養などの利用者が施設に住民票を移しても、
以前住んでいた市町村が費用を負担する特例がある。
町田市は老人ホームにもこの特例を適用するよう求めるなどして、「終の住み家」作りを進めていくという。

[ 毎日新聞 1月29日 ]





<解説>

こちらの記事は毎日新聞内、「[なんだか変!]東京ウオッチング」に掲載されたもののようです。

学生時代、管理人は「町田市の福祉」についてレポートを提出したことがあります。
何度も町田図書館に足を運んだり、施設に行ったりと。
町田市はベビーブームに伴い、新興住宅地として発展を迎えました。
町田市には働き盛りの若い夫婦が多く住居を求めてやってきました。
そのため、年齢別の人口分布では、その年代の人が非常に多いんですね。
で、これが時間がたつと、そのときに移り住んできた若い夫婦が高齢者になるわけです。
そうすると、人口構造のアンバランスが致命的な欠陥になるわけですよね。

そういった高齢化社会の到来に備え、町田市は福祉施策に重点を絞っていました。
町田市は積極的にバリアフリー化を進め、「福祉のまちづくり」の先駆けとなりました。

さて、今回のニュースですが、
結論として、やっぱり施設のほうが楽なんですよね。家族にとっては。
当然のように、施設への需要が高まるわけです。
都内の中心地では地価も高く、施設は作れないので、郊外郊外に施設ができ、
気がついたときには郊外は特養だらけになっているわけですよね・・・。
でも、本来、施設から在宅へシフトしていくのが介護保険のねらいだったわけですよね。
そのほうが安上がりなんですよ。行政側にとって見たら。

ところで、なぜ、町田市かというと、
町田市の福祉っていうのは、当時の市長のもと、住民たちが作り上げてきた福祉でもあるわけです。
そのため、福祉に対する住民意識は非常に高いのです。
つまり、「福祉は自分たちで作るもの」という市民意識ですよね。
そのため、施設の建設への要望や申請が立て続けにやってくるんでしょうね。

もちろん、来るべき町田市の超高齢化時代の到来に備えて、というわけですが・・・。



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